はじめに…
想像してみてください。
極度のプレッシャーの中で仕事続きの毎日。あなたの心と体はもうヘトヘトだが、明日から2週間出張。
3日前に出張から帰ってきたばかりで、ようやく2時間の時差ボケが治ったばかりだというのに。。。
今度の出張先は3時間の時差があるため、現地に着いてもまだ眠くは無く、寝るのは夜中になりそうだ。
寝不足になるのは確実だが、『そんなの言い訳だ』と自分にムチを打つ。
なぜなら成果を上げなければ、数万人の人々から罵倒を喰らうし、先月入ってきた新入社員は、私の部署ではもう既に1番の営業成績らしい。
『まずいな。』
少しため息が溢れる。最悪クビになる可能性もあるからだ。家族を守るために必死に戦わなくては、、、生活が掛かっている。
『よし。』
短く息を吐き。気合を入れて今日もあなたは仕事へ向かう。
いかがですか?
成果を求められ続け、結果が出なければクビという厳しい環境で毎日仕事や学校へ行く人はあまり多くないでしょう。
しかし、日本人選手も多く活躍するMLBで、選手たちは上記のような環境の中で戦っています。
2022年シーズンもオールスターが開催され、中盤に差し掛かった折り返し地点。
どれほど過酷な環境でMLB選手はここまでの3ヶ月半を戦い、あれほどのパフォーマンスを披露しているのか、選手の生の声やデータなどを元に、考えていきます。
*お断り
最初にお断りしておかなくてはならない点が一点あります。
著者は、英語を話す事はできるため、海外の論文やスポーツに関するデータ、記事を読む事はできるものの、日曜の朝にTVで活躍する野球評論家でもなければ、過去に偉大な成績を残したプロレベルの野球選手でもありません。
多くの読者と同様にただの “野球ファン”、並びに “海外スポーツファン” です。
上記を踏まえて、当ブログ記事を楽しんでもらえれば幸いです。
選手達が跨ぐ4つのタイムゾーン
まず、アメリカの本土(ハワイ、アラスカなどを除く)には、4つのタイムゾーンがあります。下の画像のような感じですね。
(OpenClipart-VectorsによるPixabayからの画像)
Pacific Standard
マップの左からアメリカ本土のピンク色で塗られているところが、パシフィックスタンダードと呼ばれる地域。
有名なカリフォルニア州があるところで、ロサンゼルス・エンゼルスやがシアトル・マリナーズこのエリアです。
Mountain Standard
紫がマウンテンスタンダード、ロッキー山脈があったり、山が連なっている地域で、コロラド・ロッキーズやアリゾナ・ダイヤモンドバックスなどが、ここに属しています。
Central Standard
シカゴ・カブスやテキサス・レンジャーズなど多くのチームが属する中地区のセントラルスタンダード。黄土色の部分です。
Eastern Standard
最後に東海岸部の緑。イースタンスタンダード。ニューヨーク・ヤンキースやワシントン・ナショナルズがここのタイムゾーンです。
大谷翔平選手の異常さ
このように、本土だけで4つのタイムゾーンに分かれます。
例えばニューヨーク・ヤンキースや、アトランタ・ブレーブスなどの東海岸での試合と、大谷選手の所属するロサンゼルス・エンゼルスや、サンディエゴ・パドレスなどの西海岸は、時差が3時間違います。
特に西から東へと移動する場合には、体内時計を進めなければならないため、眠りにくいです。西から東への遠征ではMLB選手の成績の悪化やチームの勝率低下などのデータも、2017年のノースウエスタン大学の研究によって報告されているほどです。
*これについては、論文を用いてどれほどの成績悪化なのかを掘り下げて、次週記事にいたします。
そんな時差ボケにもなる中、連続の試合やダブルヘッダーを含める、162試合のレギュラーシーズン。
1週間の間に複数回、フライトとバスでの移動。夜中にホテルに到着し、次の日の試合に備える事が当たり前の世界です。
このような環境の中で、ライバルとの熾烈なレギュラー争いに勝たなくては、メジャーの舞台で戦うことすらできません。
レギュラー獲得後も、過密日程による成績が低下した場合、「そんなの言い訳に過ぎない」と、ファンからはブーイング。
最悪の場合、チームからのリリースもあるという、、、
ビッグマネーを稼いでいるとは言え、日本のサラリーマンよりも身体的、そして精神的にもきついんじゃないかと思えるくらいです。
大谷翔平選手は、過密日程でのリカバリー不足と時差ボケという環境の中で、ホームランを打って、160kmの速球を投げて、二刀流で活躍しているわけです。 やはり異常だなと常々感じます。。。
現代の最先端科学でも、1日睡眠不足の日を経るだけで、数杯のアルコールを飲んだ時と変わらないほどの認知的、そして身体的なパフォーマンスの低下が見られることが示唆されています。
実際に睡眠やリカバリー不足によって反応が遅れたり、身体能力の低下によって、怪我をする選手が多くいるのは、事実でしょう。
スター選手のケガによる球団の推定損失額
他にも過去にアメリカのバスケ界NBAで、スタープレイヤーが怪我をした場合のチームの損失額をリサーチした調査がありました。
チームの柱であるスタープレイヤーが怪我をした場合、失われたチケット収入と商品販売を考慮に入れると、球団としての損失額は1億ドル(110億円)にもなると言われています。
NBAでこの額ですので、チームとしてもリカバリー不足は、MLBでもかなり大きな負担と言えそうです。
過去には、今年NBAチャンピオンになったゴールデンステート・ウォリアーズが、およそ15年前から行っている、組織的な休息管理を紹介しましたが、球団の損失リスクを抑える投資としても、リカバリーは、重要な要素のひとつなのかもしれません。
*この記事は下にURLがありますので、詳しく知りたい方は、現在の記事を読み終えた後に併せてチェックしてみてください。
選手たちの生の声と対策
イチロー選手
過去にイチロー選手はこう語っております。
(時差ボケには)19年目だけど慣れない。飛行機の過ごし方、着いてからの過ごし方、テクニカルなことはあるけど、それでも難しい。
2019.03.16 日本での開幕戦前
フィジカルコンディションに人一倍気を遣うイチロー選手にも、時差ボケ対策は難しいようです。
レブロン・ジェームス
他競技ですがバスケ界NBAから、ロサンゼルス・レイカーズに所属のキング、レブロン・ジェームスは、2011年のマイアミ・ヒートに所属時、インタビューにこのように答えています。
まだ気持ちが戦ってる感じで寝るのが非常に大変。気持ちの切り替えが難しいんだ。 でもリカバリーに関しては睡眠が1番重要。
トップレベルで熱く戦う選手たちには、アドレナリンが出まくってて眠れないという問題もあると語っているレブロン。
負けられないと挑んだゲーム後はアドレナリンも出まくりで寝れないですよね。。。
次回へ
大谷翔平選手も独自の対策があるそうで、飛行機で移動する際は、耳から太陽光に似た強い光を照射する機器を用いて、時差ボケ対策などもしているそうなんです。
光を使った方法は、光療法として科学界では知られており、私たちも寝不足や時差ボケの際に、体内時計合わせのため、取り入れる事ができます。
意外にも、私たちの身体は光と密接に関わっており、特に時差ボケ等が無くても、太陽光やブルーライトとの付き合い方によっては、簡単に体調不良になる可能性があります。
「なんだか最近やる気が出ない」や「疲れが取れない」と感じている方は、要注意です。
少し長くなりすぎたので、次週、日常で使える光の利用法や、時差ボケとMLBプレイヤーのパフォーマンスを調査した論文を紹介します。Twitterにて更新情報をお知らせしますので、フォローをお忘れなく。
下記リンクより、MLBの時差ボケとパフォーマンスに関する調査をご覧いただけます。
大谷翔平選手も行う光による時差ボケ対策とその科学的効果について。おすすめのガジェットも紹介
また、下記リンクよりウォリアーズが15年前から行っていたコンディション管理に迫った記事も併せてチェックしてみてください。
ウォリアーズの強さの秘訣は我々も日常で行うアレの管理
Reference: https://baseballking.jp/ns/181021
https://www.sakaimed.co.jp/advance/interview/ohtanishohei-3/
https://www.cbssports.com/nba/news/in-multi-billion-dollar-business-of-nba-sleep-is-the-biggest-debt/