【バスケ界の最高峰NBAから】
ステフィン・カリーのシュートフォーム
データで見るステフィン・カリー
本日は、ジャパンゲームでも日本を沸かせたステフィン・カリーをスポーツサイエンス的に解明していきます。
NBAの歴代3ポイント記録も更新し、歴代最高のシューターとなったカリーですが、身体のサイズやウィングスパンなどではNBA平均より大きく劣っています。
しかし、サイズ的なハンデをも凌駕する技術的なアドバンテージがシュートフォームには隠されているようです。
バスケを行う方などにも応用可能なデータとなっておりますので、是非参考にしてみてください。
オバマ大統領も助言したカリーのシュートフォーム
2015年にホワイトハウスを訪れたウォリアーズ。その際、当時アメリカのオバマ大統領は、ステフィン・カリーにこう言います。
スリーを打てるのは分かるけど、クレイ (トンプソン) の方が、シュートフォームがきれいだよ。
そんな賛否両輪あるカリーのシュートフォームですが、その凄さはどのへんなのでしょうか。
アメリカ・スポーツチャンネルESPNがまとめた動画が興味深かったので、著者が持っているデータと共にそちらからも引用して紹介していきます。
NBA歴代最高シューターステフィン・カリーのシュートフォームデータ
シュート位置
まずは、シュートの高さから。
NBA全体の平均身長は大体2mくらいですが、NBA.comからの公式情報でのカリーの身長は、6’2″, 約188cmと全体平均から大きく劣っています。
それに伴い、シュートを放つリリースポイントも、NBA平均は、約204.2cmあたりなのに対し、カリーは約192cm程の高さからシュートします。
ここで疑問となるのは下記の点です。
・リリースが平均より低いとすると、ヤニスやKDなどウィングスパンが長く、背の大きな選手にブロックされやすいのでは?
低いシュート位置をカバーする放物線角度
平均よりリリースポイントが低くブロックされやすいディスアドバンテージを、カリーはシュートの放物線で補います。
データとして、リリース後の放物線の角度は、NBA平均で約45度です。一方のカリーは、約50-55度の角度でボールがリングへ向かっていきます。
よって、ディフェンダー視点から見ても、カリーのシュートは、上に向かっていく軌道に近いためブロックし難いようです。
さらに19%高い成功率
加えて、カリーの55度の角度のシュートは、NBA平均の45度と比べ、およそ19%もシュートが成功する確率が高いです。
これは、リングは地面と水平なのに対し、NBA平均:入射角45度のシュートと、カリーの55度のシュートを比較すると、55度の方が、上から入ってくるため、リングに弾かれる確率が低い事によって19%ほど高くなります。
Knee Flexion 膝の角度
Knee Flexion (シュート時の膝を折り曲げる角度) は、シュート時の力をボールへ伝えるために大切です。
30feet, 約9.1mほどの距離からカリーはよくロングスリーを放ちます。30フィートの距離は、イメージとして掴みづらいですが、スリーポイントラインから2、3歩離れた位置です。
30フィートからのシュート時に曲げる膝の角度は、NBAの平均で約25度。力をボールに与えるため、結構沈むイメージです。対してカリーは、ロングスリーでも、ミドルレンジでも、シュートする場所に関わらず約115度ほどしか曲げないようです。
なぜそれほど曲げなくてもボールに力が伝わるのか。
リストの強度
ここにはリストの強さが関係してきます。
カリーは、シュートの際、リリースする右手首のスナップ速度が、毎秒3000度ほどに達します。
イメージが難しいですが、毎秒3000度は、毎秒約8.3回転ほどで回る自転車タイヤ….
いや、説明が難しいですが、それほど強い手首を持っていることで膝をあまり曲げずに済んでいるようです。
シュートモーションの素早さ
ドリブルの体勢からボールをピックし、シュートモーションを経て、リリース完了までカリーは、約0.4秒ほどの素早さで完了させます。
ボールを持ってからシュート完了までにかかる時間は、NBA平均で約0.54秒です。
キング・レブロンとの比較
分かりやすい例として、ロサンゼルス・レイカーズのキング・レブロンのリリースタイムを比較してみましょう。
レブロンのリリースタイムはおよそ0.56秒。
これをカリーのリリースタイムに当てて比較すると、レブロンがボールを顔上に上げ、手首のスナップ開始時に、もう既にカリーはシュートが完了しているという事になります。
サイズ的なアドバンテージを技術で乗り越えたステフィンカリー
最初に述べた通り、カリーはサイズ的にNBA平均から大きく劣っています。しかし、今回紹介したようなシュートフォームの素早さや、シュートの角度、精度を改善することによって歴代最高シューターまでに上り詰めました。
しかし、カリーの持ち味としては、スリーポイントなどのシュートのみではなく、素早いドリブルなども挙げられます。
ここでもカリーはサイズ的なディスアドバンテージを乗り越えるため他とは違ったトレーニングを過去から行っていたようです。
小柄な選手は、通常アジリティーなど俊敏性を鍛えてスピードを生かしますが、カリーはは大衆があまり注目しない “脳機能” を鍛えていたのです。
その気になる練習方法と科学的な効果を過去には当ブログにて紹介しています。下記リンクより併せてチェックしてみてください。
NBA : ウォリアーズ、ステフィン・カリーの脳機能を高めるトレーニング。バスケで身長が低くても大丈夫
Reference : https://www.youtube.com/watch?v=W0044xEaZaA&list=WL&index=9
https://www.youtube.com/watch?v=QhJ_vjS600A&list=WL&index=11