【少年野球からの調査論文】この投球回より投げすぎるとケガ発症率は3.5倍に?!

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当ブログでは、海外研究や論文を元にした科学的な練習法を紹介したり、話題の海外スポーツトピックから、データベースな新情報をお伝えしております。 たまにスポーツ英語も紹介。

MLB、NBA、NPB、ヨーロッパサッカーが題材となっていることが多いです。

筆者は、ダルビッシュ有さんとフアン・ソトの大ファンで、夢はサンディエゴに生で見に行くこと。高校まではただの野球人だったが、海外のスポーツが好き過ぎて、英語を学び、日本の外に住んでいる20代。

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佐々木朗希投手の話

4月17日日曜日の千葉ロッテマリーンズ対北海道日本ハムファイターズの試合で、約1週間前に完全試合を達成した佐々木朗希投手が、またもや素晴らしいピッチングを披露しました。

今回も、序盤から日本ハム打線を力でねじ伏せ、160キロ台のファストボールと140キロ台後半のスプリットで押さえ込んでいました。

8回まで走者一人も許さず抑え、前人未到の2試合連続完全試合達成まであと1イニングまで迫ったところで、井口監督がまさかの投手交代。


大記録達成とはなりませんでした。

SNSなどでは、この選択を批判している人も見て取れます。

皆さんはどのような意見をお持ちでしょうか?

個人的な見解としては、井口監督は相当大変な決断を迫られていたと思います。
批判覚悟で継投を告げた、ロッテの首脳陣の決断も簡単なものではなかったのは事実です。 

井口監督の決断

試合後のインタビューで井口監督は、

交代理由に関して、今日は100球弱と決めていて、1年間ローテーションを守ってほしい

との考えを語っていました。 

以前、井口監督はラジオでも、データを使って選手を管理していると明かしており、千葉ロッテの組織力の高さが見て取れます。

球場にはカメラが設置されており、選手の走行距離などがデータ化されているため、統計的に見て、ケガがしやすいコンディションになる前に、選手の交代や調整をしているそうです。


一時の感情に流されず長期的な視野を持って、プログラム通りに選手を起用しているからこそ、千葉ロッテは近年、比較的上位に食い込んでいけるチーム作りに成功しているのだと思います。

アラバマ大学の投球回に関する調査

今回の降板は、佐々木朗希投手の将来性も加味してのことだと思われますが、投手にとって適切な年間イニング数は、アラバマ大学などが少年野球を対象に行った、フォローアップ研究が参考になります。

481人の9-14歳の少年野球をやっている少年たちを対象に10年間追跡調査した、アラバマ大学らが行った研究によると…

1年間で100イニングス以上の投球回を投げたピッチャーのケガを発生する可能性が100イニングス以下のピッチャーに比べて3.5倍高かったそうです。

ここでのケガの定義は、10年間の間に肘もしくは肩の手術を受ける、または投げ過ぎによる故障のために引退を余儀なくされた選手達です。

この研究は、体が出来上がる少年期を対象に行われているため、体がすでに出来上がっている大人の故障率は未知数ではありますが、これから佐々木投手のようになる可能性がある少年達や、その指導者には、ぜひとも参考にしていただきたい事実です。

肩、肘は消耗品である

佐々木投手も肩や肘は消耗品であるということを前提にした上で、学生の頃から怪我をしないような起用法をされていました。


高校時代にこの試合に勝てなければ甲子園に出場できない岩手県大会で、高校野球特有の過密日程を考慮し、登板を回避。その後にチームは敗退し、甲子園出場はなりませんでした。この起用法が日本中で大きな話題を呼んだことは、記憶に新しい方も多いかと思われます。

その際、野球界のご意見番と呼ばれる方が、「怪我を恐れていてはアスリートではない」と発言した事は、大きな波紋を呼びました。

このようなバックグラウンドがあった中にも関わらず、ロッテ首脳陣は大記録達成への期待に流されることなく、数字に基づいた冷静な判断を下した事は、賞賛に値すると感じています。

「投げ込み、走り込み*こそが正義である」みたいな根性論が、未だに少年野球や学生野球の世界では蔓延しています。

プロ野球の世界で怪我や故障を考慮した、選手ファーストな采配が増えてくることによって、トップダウン方式で野球界全体に正しい風潮が流れやすくなってくるでしょう。

*過去に走り込み主義につきましては、記事にしております。こちらも下記より併せてチェックしてみてください。

野球界で語り継がれる、走り込みで足腰を鍛える。科学的には本当に正しいのか

Reference: https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/0363546510384224

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